#22 車椅子のプードルのお母さん

 

歩みが速くなったパオパオが散歩に慣れてきた頃、朝のお散歩は6時頃に行っていました。

パオパオがお気に入りの場所は、自宅から10分ほどの緑地公園です。

この時間徐々に犬の散歩に来る人がちらほらいて、少しづつ活気が出てくるようでした。

公園でお散歩する時は、芝生の中に入っていく時と、芝生の周りのトラックを行く時とがあって、この日はトラックを歩いていました。

トットットットッと順調に進んでいたのですが、向こうから大きなプードル3頭が飼い主さんと一緒にゆっくりゆっくりやって来ました。

そのうちの一頭は車椅子を着けていました。

プードルの中ではいつもトイプードルばかりに出会っていたので、大型犬の大きさがあるのを見て、「なんて大きいのだろう!本当にトイプードルをそのまま拡大したみたい。」と思いました。

パオパオがそのプードル達に気がついてじーっと見ていましたが、そのうちトラックの端に移動してしまいました。

そしてそのまま動きません。

プードルが大きいから怖いのかな、と思っていましたが、そのうちに、プードル達がこちらに気づいてゆっくりゆっくり近寄ってきました。

大型犬3頭に近寄られるのは人間も結構緊張します。

それなのに、プードルの飼い主さんは一向にのんびり歩いています。

3頭のうち車椅子を着けている1頭が、足を引きずってゆっくりパオパオの方へ向かって来ました。

パオパオはいよいよ縮こまり、怖がり始めました。

そして側まで来ると、パオパオを上からゆっくり覗き込みました。

触れようとしたので、「噛まれそう!」と、怖くてリードを引っ張って後ろに去ろうとすると、そのプードルの飼い主さんに「大丈夫ですよ、そのままで。」と言われました。

「これは、あの2頭の母親で、子育てをしてきたので、老犬になって車椅子になっても子犬を見ると何かしてあげようとするんですよ。」

そのプードルのお母さんは、本当にやさしそうにパオパオをしばらく覗き込んでいました。

でもパオパオは、怖がって固まったままでした。

そのうちにプードルのお母さんはおもむろにパオパオから離れて、ゆっくりゆっくりトラックのコースへ戻っていきました。

そして待っていた2頭に合流すると、又ゆっくりゆっくり歩いて行きました。

パオパオは去っていく3頭をじーっと眺めていました。

 

飼い主さんが車椅子のプードルママのことを、

「母性愛でね…。」

と言っていたのが印象的でした。

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